「シワ改善」を化粧品・薬用化粧品(医薬部外品)の広告で表現できるケースとは

目元のしわを気にする女性

多くの女性が悩む肌の「シワ」。一言でシワと言っても、加齢によるシワや紫外線によるシワ、乾燥による小ジワなど、さまざまなものがあります。「シワ」に効果が期待できる化粧品は多くありますが、実は化粧品や薬用化粧品の違い、効能評価試験済みか否かでも広告に表現できる文言は変わってきます。

この記事では、「シワ改善」の表現に関する規制についてくわしく解説します。

目次

化粧品で表現できる効果効能とは

化粧品

まず化粧品で表現できる効果効能は、厚生労働省からの通達により56項目に定められています。

56項目について、くわしくはこちら▼の記事をお読みください。

肌のシワに関しては、(56)乾燥による小ジワを目立たなくする。という表現のみが認められており、化粧品ガイドラインにはさらに具体的な例が明記されています。

(1) 認められる表現の具体例
・皮膚の乾燥を防いで小ジワを目立たなくします
・うるおい効果が小ジワを目立たなくします
・キメを整えて乾燥による小ジワを目立たなくします
(2) 認められない表現の具体例
・○○○が小ジワの悩みを解消します
・小ジワを防いで美しい素肌を育てます
・乾燥による小ジワを防いで、お肌の老化防止を・・・
・小ジワ*を目立たなくします。(注釈として*)乾燥によるもの、と記載する方法)

化粧品等の適正広告ガイドライン2020年版

つまり、肌のうるおい不足による「乾燥」が原因でできた小ジワを目立たなくする表現は可能ですが、単に小ジワを予防・解消したり、アンチエイジングを謳ったりする表現は認められていません。(これを「しばり表現」といいます)

【しばり表現の具体例】
○ 乾燥による小ジワを目立たなくする。
× 小ジワを目立たなくする。

さらに、(56)乾燥による小ジワを目立たなくする。という表現を用いるためには、日本香粧品学会の「化粧品機能評価ガイドライン」に基づく試験等を行い、その効果を確認した場合に限るとされています。

化粧品の広告で(56)小ジワの表記をするためには、どのような試験が必要?

ビーカーや試験管

ここでは、化粧品機能評価ガイドラインに基づく試験が、どのような内容なのかについてご紹介します。[1]

表.化粧品の抗シワ機能評価試験

対象とするシワの部位 目尻
推奨する被験者 シワグレード1~3を有する被験者
試験方法 ・遮蔽試験(評価者にどちらの群か分からないようにする)
・塗布群と無塗布群での比較
評価項目 ①シワグレード標準を用いた目視評価、写真評価
②レプリカの二または三次元機器評価、あるいはin vitroでの三次元機器評価
有効性の判定への考え方 ①または②のいずれかで効果の有意差が確認できること
試験期間 2週間以上
効果表現 乾燥によるシワを目立たなくする
シワ改善メカニズム 不要

化粧品機能評価ガイドラインを一部改変して掲載

このような試験で問題が無いと認められた場合は「効能評価試験済み」と表記が可能となります。
ただし、2020年度化粧品ガイドラインの改定で、「効能評価試験済み」という表記には以下の条件が追加されました。

E7-1 「効能評価試験済み」の表記について

①「効能評価試験済み」の表記は、「乾燥による小ジワを目立たなくする。」の表現の説明であることがわかるよう近傍に記載し、他の効能に関する試験であるかのような誤認を与えないこと。
②「効能評価試験済み」の表記は、保証的になるため、キャッチフレーズ・大きな活字・色調を変える等の強調表現はしないこと。
③ 保証的な表現や効能効果を逸脱した表現となるため、「効能評価試験済み」の表記について、前後に文言を付加しないこと。

化粧品等の適正広告ガイドライン2020年版

つまり、「効能評価試験済み」を大きな活字で記載する、色調を変えるといったように目立たせて記載することで、過度に安全性の保障をしているような表記にならないように注意することが重要です。

薬用化粧品(医薬部外品)でシワ改善は表現できる?

化粧品

では、薬用化粧品(医薬部外品)の場合はどうなのでしょうか。

簡単に言うと、薬用化粧品で「抗シワ効果」を表記するためには、化粧品の試験よりもさらに厳しい条件をクリアする必要があります。

表.薬用化粧品(医薬部外品)の抗シワ機能評価試験

対象とするシワの部位 目尻
推奨する被験者 シワグレード3~5を有する被験者
試験方法 ・二重遮蔽試験
・有効成分配合製剤を塗布した群とプラセボ塗布群での比較
評価項目 ①シワグレード標準を用いた目視評価、写真評価
②レプリカの二または三次元機器評価、あるいはin vitroでの三次元機器評価
有効性の判定への考え方 ①かつ②の両方で効果の有意差が確認できること
試験期間 2か月以上
効果表現 シワを改善する
シワ改善メカニズム 必要


化粧品機能評価ガイドラインを一部改変して掲載

さらに医薬部外品である薬用化粧品の場合は、有効成分の含有が必須であり、その効果効能に関しては、シワ改善メカニズムの証明が必要です。

医薬部外品で抗シワ効果が認められている成分とは

現時点までに医薬部外品に承認されたシワ改善有効成分は、ニールワン、レチノール、リンクルナイアシンの3種類です。

医薬部外品表示名(愛称) 承認年/会社 シワ改善作用点
三フッ化イソプロピルオキソプロピルアミノカルボニルピロリジンカルボニル メチルプロピルアミノカルボニルベンゾイルアミノ酢酸Na
(ニールワン)
2016年
ポーラ化成工業株式会社
好中球エラスターゼ活性阻害
レチノール
(純粋レチノール)
2017年
株式会社資生堂
表皮ヒアルロン酸産生促進
ナイアシンアミド
(リンクルナイアシン)
2017年
P&Gプレステージ合同会社
コラーゲン合成促進?

好中球エラスターゼは、タンパク質を分解する酵素であり、肌のハリや弾力を維持するコラーゲンやエラスチンなどを分解する作用が報告されています。[2]そのため、好中球エラスターゼの活性を抑制することでシワ改善効果が期待できます。

表皮ヒアルロン酸は、加齢によるターンオーバーの延長(代謝能の低下)とともに減少することが分かっています。[3]
表皮ヒアルロン酸産生を促進することで皮膚水分量を増加させ、皮膚の柔軟性を改善することで抗シワ効果が期待できます。

ナイアシンアミドの抗シワ改善作用点については現在のところ明らかにされていないようですが、in vitroで培養ヒト線維芽細胞へのコラーゲン合成促進が報告されていることから[4]、コラーゲン産生を促し肌のハリを改善して抗シワ効果をもたらすと考えられます。

まとめ~化粧品の広告でできる「シワ改善」の表現とは~

化粧品と薬用化粧品(医薬部外品)では、「シワ改善」効果が認められる条件(試験内容)が異なり、できる表現も異なります。
化粧品では、「乾燥による小ジワを目立たなくする」といったような「乾燥」によるシワである旨を明記した表現が必要で、さらに「※効能評価試験済み」の併記も必要です。
一方で、薬用化粧品では、シワ改善効果の認められた有効成分が含有され、試験にクリアした製品のみ、シワ改善の効能の表記が可能となります。現在までに医薬部外品に承認されたシワ改善有効成分は、ニールワン、レチノール、リンクルナイアシンの3種類です。

このように、「シワ改善」を表記するにはさまざまな条件が必要で大変難しいですが、「シワ」という言葉を避けてイメージや連想から訴求をする方法も一つです。「目元が気になる方へ」「目尻のハリの悩みに」「ピンとハリのある肌へ」という表現を使用したり、ターゲットユーザーである目元にシワのある女性を広告の画像に使用したりするなど、過度にならない範囲で工夫をすることで表現できる場合もあります。※全体の流れや文脈によって判断されます。

【参考文献】

[1]<化粧品機能評価法ガイドライン>新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン(2006),日本香粧品学会30,4,316-332
[2]楊 一幸(2019)「抗シワ医薬部外品成分の開発」日本香粧品学会誌(43)(1),24-27.
[3]M. Engelke, et al(1997)「Effects of xerosis and ageing on epidermal proliferation and differentiation」British Journal of Dermatology(137)(2),219-225.
[4]P.J. Matts, et al(2002)「A Review of the Range of Effects of Niacinamide in Human Skin」International Federation of Societies of Cosmetic Chemists Magazine(5)(4),285-289.

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