美容機器を販売するときにも必要な「広告」。
医療・美容関係の広告では特に大きく関わってくる「薬機法(医薬品医療機器等法)」は、主に医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の有効性や安全性に関する法律です。そのため、医療機器の承認を受けていない美容機器(雑貨)については、薬機法の規制の対象外だと思われる方も多いかもしれません。
しかし、あたかも人体に影響を与えるかのような効果効能を標榜してしまうと、法律上、医療機器とみなされ、薬機法違反になることがあるため注意が必要です。
この記事では、美容機器(雑貨)を販売するときの広告作りの注意点についてお伝えします。
医療機器と雑貨の違いとは
まず、医療機器と雑貨は具体的にどのように区別されているのでしょうか。
薬機法における医療機器の定義は以下になります。
医薬品医療機器等法第2条第4項
人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であつて、政令で定めるものをいう。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律
簡潔に言うと、私たちのからだの構造や機能に対して効果効能をもつと承認されたものは医療機器、承認されていないものは雑貨とみなされます。
薬機法第68条では、「承認・認証を受けていない医薬品・医療機器・再生医療等製品について、その名称・製造方法・効能・効果又は性能に関する広告をしてはならない」としています。そのため、雑貨にもかかわらず「ニキビが治る」「筋肉を刺激して痩身効果がある」などの効果効能を標榜した広告をして販売すると、薬機法に抵触して2年以下の懲役または200万円以下の課徴金の罰則を受ける可能性があります。[1]
医療機器と雑貨の両方がある商品例とは
商品の中には、その用途や目的によって、医療機器に分類される物もあれば、雑貨に分類される物もあります。[1]
例1.マスク(不織布等)
医療機器 | 細菌やウィルスに対する殺菌・不活化効果、感染症予防を標ぼうするもの |
雑貨 | 不織布等でできており、単に物理的な除去を目的とするもの |
例2.手袋
医療機器 | 医療機関等で患者及び使用者を交差感染から守るため、手術、検査、検診、治療 行為等で使用するもの |
雑貨 | 上記の目的以外(掃除用・園芸用等)で、単に手に汚れがつかないことを目的とするもの |
例3.筋肉運動補助器具(EMSなど)
医療機器 | 運動マシンとしてだけでなく、肩や腰にあててコリをほぐしたり、運動後の筋肉の疲れに有効等の 標榜をしているもの、脂肪減少作用等を標ぼうするもの |
雑貨 | 筋肉の運動のみを目的としているもの |
例4.美容関連器具
医療機器 | シミ・ソバカスの除去、 たるみを引き締め小顔に、血行の改善、新陳代謝促進、毛根に作用して 半永久脱毛するもの |
雑貨 | 身体の構造・機能に影響を与えないもので、単に美容(洗顔や化粧品を塗る動作の代用程度)を目的 とするもの |
雑貨の美容機器がどのような美容効果を標榜できるかについては、事実に基づくことであり、肌のきめを整える・肌をなめらかに保つ等の化粧品に認められている56の効果効能と同程度の範囲であったり、生えている毛のみを物理的に切断することを表現していたりする場合は、問題ないとされています。
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不適切な表現の例とその言い換え表現とは
では、どのような表現をすると違反になってしまうのでしょうか。ここでは、過去の違反事例などを参考に、不適切な5つの具体例と、その言い換え表現をお伝えします。
1.(EMS)腹筋に電気刺激を与えることで、ダイエット効果があります
(NG理由)脂肪減少作用や痩身の表記はNG
(言い換え表現)電気刺激で普段使っていない筋肉を動かします
→電気を利用して筋肉を振動させるという表記だけであれば記載しても問題ない
2.(脱毛器)毛根の細胞を死滅させて永久脱毛!
(NG理由)毛根に作用して脱毛するという表現は医療機器のみOK。また永久も過剰表現とみなされる。
(言い換え表現)気になる部分のムダ毛を剃って、〇週間に一度の光照射
→物理的に切断するという表現であれば問題ない
3.(ハーブの香りがする枕)ハーブの香りが睡眠時のリラックス効果をもたらします
(NG理由)香りの効果としてのリラックスは、体内にハーブの成分を取り込んだ結果、身体の機能に影響を及ぼしたという意味に取れるのでNG。
(言い換え表現)快適な眠りをサポートして、リラックス効果をもたらします
→リラックスできる雰囲気をつくるという意味ならば問題ない
4.(靴)履き続けるだけで、気になるO脚も改善します
(NG理由)靴を脱いだ後も、O脚が矯正されていると解釈できるようであればNG
(言い換え表現)体のゆがみを引き起こすO脚を履くだけで自然にサポート
→シューズをはいている間だけの矯正と解釈できれば問題ない
5.(電動式バイブレーター)快適な振動でツライ肩こりを緩和し、マッサージ効果が期待できます
(NG理由)電動式のものでマッサージと表記すると医療機器に該当するためNG
→以下の通知より、非電動式のもので、指圧などによる物理的作用で血行促進、コリをほぐす効果があることを表記することは可能。
薬発第一一三六号 厚生省薬務局長通知
単に突起物やてこ等を応用し背筋等にあてて指圧する器具類(電動式のものは除く。)は、次に揚げる範囲の効能、効果のみを標ぼうする場合に限り医療用具に該当しないものとして取扱うこととすること。したがって、今後これらの器具類については、薬事法の規定に基づく製造の承認、許可等を必要としないものであること。
ただし、次に揚げる範囲以外の効能、効果を標ぼうした場合は無承認、無許可の医療用具に該当するのでこの点十分留意され製造業者等に周知徹底されたいこと。
(1) あんま、指圧の代用(読みかえはしない。)
薬発第1136号各都道府県衛生主管部(局)長あて 厚生省薬務局長通知指圧代用器等の取扱いについて
(2) 健康によい
(3) 血行をよくする
(4) 筋肉の疲れをとる
(5) 筋肉のこりをほぐす
美容機器の広告でも薬機法を意識したライティングを
医療機器の承認を受けていない美容機器(雑貨)の広告では、薬機法の規制の対象外だと思ってしまう方も少なくありません。しかし、美容機器(雑貨)の公式ホームページや販売サイトを制作するためには、消費者に誤解を与えないように、きちんと法律を遵守したライティングをすることが大切です。
Office ファーマヘルスでは、ガイドラインや過去の行政の指導事例をベースに、法律を遵守して広告制作やコンテンツ記事の執筆を行っています。お困りの方はお気軽にご相談ください。
【参考資料】
[1]東京都福祉保健局健康安全部薬務課 雑貨等の広告について(薬事該当性)