自社の開発した商品やサービスを一般の人々に広く周知するために必要な「広告」。
商品やサービスの魅力をお客様にきちんと伝えていくことは大切ですが、広告を作る際には「景品表示法」という法律をきちんと守っておかないといけません。
この記事では、
・景品表示法とその意義
・よく見る「優良誤認表示」と「不実証広告規制」の関係性
・よく見る「有利誤認表示」と「二重価格表記」の関係性
・過去の違反事例
についてお伝えします。
景品表示法とは
景品表示法とは、正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」といいます。一般消費者が安心して良い商品・サービスを選択できるように、質の悪い商品・サービスから消費者を守り、利益を保護してくれるための法律です。
実際のものよりも良く見せようと、商品・サービスの品質や内容、価格などを偽って表示を行うことや過大な景品・懸賞金などで一般消費者を誘引しようとすることは、この法律で厳しく規制されています。違反すると、時には重い罰金(課徴金)や罰則を命じられることもあるのです。
不当表示の禁止について
まず「表示」とは、自社の提供する商品・サービスの品質、内容、価格などを消費者に知らせる広告や表示全てを指します。
たとえば、以下のようなものがあげられます。[1]
・容器、パッケージ、ラベル
・テレビやラジオのCM、新聞、雑誌などの刊行物
・インターネット上の広告、商品ホームページ
・チラシ、パンフレット
・看板、ポスター
・実演販売、陳列
そして景品表示法ではこれらの「表示」の中で、商品・サービスの内容や価格について、実際よりも著しく良いモノのように見せたり、実際の取引よりも著しく有意な取引条件であるように見せたりすることを「不当表示」として禁止しています。
平成25年以降に、ホテルのメニュー表示が実際の料理や使われている食材と異なるといった事例が次々と発覚し、「不当表示」が景品表示法でさらに厳しく取り締まりを受けるようになりました。
この「不当表示」は、さらに「優良誤認表示」と「有利誤認表示」に大きく分けて定義されています。[2][3]
優良誤認表示(5条1号)
商品やサービスの品質、規格などの内容について、実際のものや競合他社のものよりも著しく優良であると一般消費者に誤認させるような表示を禁止しています。これに違反している表示を「優良誤認表示」といいます。
健康・美容関連商品の優良誤認表示については、合理的な根拠のある効果・表示であるかは「不実証広告規制(4条2項)」で厳しく判断されます。消費者庁から求めがあった場合には15日以内に、専門機関での試験データや学術文献を提出し客観的に実証された内容であるかをきちんと証明しなければなりません。[1]
優良誤認表示の例には以下のようなものがあげられます。
・食事制限をすることなく瘦せられるような効果を表示していたが、裏付けとなる根拠はなく、実際には痩せられない
・身の回りの空間を除菌できるような効果を表示をしていたが、表示の裏付けとなる合理的な根拠がない
・1回の施術でただちに痩せられるような表示をしていたが、実際には何度もエステに通わないと効果は出ない
・商品を使用するだけで、高血圧やがんなどの病気が治るような表示をしていたが、根拠がない
有利誤認表示(5条2号)
商品・サービスの価格や取引条件を、実際のものや競合他社のものよりも著しく有利な条件であるように一般消費者に誤認させるような表示を禁止しています。これに違反する表示を「有利誤認表示」といいます。
有利誤認表示の例には以下のようなものがあげられます。
・他社製品の2倍の内容量が入っていると表示していたが、実際には他社製品と同じ量しか含まれていない
・「メーカー希望価格の半額」と表示したが、実際にはメーカー希望価格は設定されていない
有利誤認表示で注意しなければならないのは「二重価格表記」です。[4]
「通常価格〇〇円のところ、期間限定で△△円」といったような、商品・サービスの価格を2種類表記することを二重価格表記といいます。このような表記を見れば消費者は当然、セール期間以外は通常価格で販売されていると認識します。
そのため、通常価格の設定は、価格表示ガイドラインで明確に定められており、セール開始日の直前8週間に4週間以上販売された実績のある価格でないといけません。[5]
最近の違反事例とは
最後に、消費者庁HPより発表されている不当表示の違反事例について、お話します。
空間ウイルス除去製品で優良誤認表示
D薬品が発売する商品の広告表示が優良誤認表示にあたるとして、2023年4月に、過去最高額である6億744万円の課徴金命令が出されています。[6]
消費者庁によると、対象となった5つの商品の広告表示に「空間に浮遊するウイルス・菌・ニオイを除去」などの文言を記載していることに対し、景品表示法第8条3項の規定にもとづき、期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めました。対象となった企業側から資料が提出されたものの、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められなかったとのことです。
不当景品類及び不当表示防止法第8条3項より景品表示法第8条3項
内閣総理大臣は、第一項の規定による命令(以下「課徴金納付命令」という。)に関し、事業者がした表示が第五条第一号に該当するか否かを判断するため必要があると認めるときは、当該表示をした事業者に対し、期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができる。この場合において、当該事業者が当該資料を提出しないときは、同項の規定の適用については、当該表示は同号に該当する表示と推定する。
ダイエット味噌汁での優良誤認表示
健康食品W会社が発売するダイエット味噌汁の広告表示が優良誤認表示にあたるとして、2023年5月に、530万円の課徴金命令が出されています。[7]
消費者庁によると、対象となった商品の広告表示に「無理な食事制限ナシ、辛い運動ナシ」などの文言が記載され、摂取するだけで簡単に著しく痩せられるかのように記載していることに対し、景品表示法第8条3項の規定にもとづき、期間を定めて、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めました。企業側から資料が提出されたものの、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであるとは認められなかったとのことです。
景品表示法を守った広告作りが大切
自社の商品・サービスの良さを、世の中の人々に広く知ってもらうために必要な「広告」。
商品やサービスの魅力をお客様にきちんと伝えていくことはとても大切ですが、広告を作る際には「景品表示法」という法律があることを意識することが大切です。広告に載せる文章だけでなく、画像や写真も過剰な表現にならないように注意しましょう。
Office ファーマヘルスでは、ガイドラインや過去の行政の指導事例をベースに、法律を遵守して広告制作やコンテンツ記事の執筆を行っています。お困りの方はお気軽にご相談ください。
【参考文献】
[1]消費者庁 事例でわかる景品表示法
[2]消費者庁 機能性表示食品の広告等に関する主な留意点(平成27年6月19日公表)
[3]消費者庁 よくわかる景品表示法と公正競争規約
[4]消費者庁ホームページ 二重価格表記
[5]消費者庁 不当な価格表示についての景品表示法上の考え方
[6]消費者庁ホームページ 景品表示法に基づく課徴金納付命令について
[7]消費者庁ホームページ 景品表示法に基づく課徴金納付命令について
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