美容・健康グッズの広告表示のポイントとは?~EMSや美顔器などで違反しやすい例や過去事例も解説~

EMSを使用する女性

家庭でのセルフケアのために用いられる美容・健康機器は、「健康で美しくなりたい」という意識の高まりや高齢化に伴い、今後ますますの市場拡大が見込まれています。
その一方で、家庭用の美容・健康機器の広告については、効果や安全性について誇大に表現するような表示が散見され、全国の消費生活センターに消費者からの苦情等が増えているのが現状です。

実際のものよりも著しく優良であるかのように示された表示は、優良誤認表示とみなされ景品表示法に違反します。
また、家庭内のセルフケアで用いられる美容・健康グッズの多くは「雑貨」であり、あたかも人体に影響を与えるかのような効能・効果を標榜してしまうと、法律上、医療機器とみなされ薬機法違反にもなるため、注意が必要です。

この記事では、とくに違反事例の多いEMSや美顔器、アロマオイルなどの事例を中心に、美容・健康グッズの広告表示のポイントについてお伝えします。

目次

そもそも美容・健康関連機器とは

美容・健康関連機器とは、主に光線や電流、振動、吸引、蒸気等などを利用することで、ヒトの肌や筋肉等に物理的な作用を与えて肌を健やかに保ったり、筋肉をトレーニングしたりするなどの効果を期待する器具等を指します。
例えば、以下のような製品があげられます。

・EMS(筋肉運動補助器具)
・美顔器、フェイススチーマー
・光脱毛器
・ヘアドライヤー
・アロマオイル

家庭内のセルフケアで使用される美容・健康関連機器の多くは雑貨に分類され、あたかも人体に影響を与えるかのような効能・効果を標榜すると、法律上、医療機器とみなされ薬機法違反となるため注意が必要です。

美容・健康関連機器における注意点

美容・健康関連機器の表示は、以下の点について注意しましょう。

効能・効果の表現の範囲について

美容・健康関連機器の効果や安全性について表現する場合には、医薬品や医療機器等の効能・効果の範囲に抵触しないようにすることが大切です。その作用・効果が事実であることを前提として、表現できる範囲は化粧品の効能・効果の範囲までとされています。具体的には、医薬品等適正広告基準で承認されている、以下のような56の効能効果の範囲内になります。

・頭皮、毛髪をすこやかに保つ。
・毛髪にはり、こしを与える。
・頭皮、毛髪にうるおいを与える。
・肌のキメを整える。
・皮膚をすこやかに保つ。肌荒れを防ぐ。
・肌をひきしめる。
・皮膚にうるおいを与える。

・(汚れを落とすことにより)皮膚を清浄にする。
・芳香を与える。
                 …など56種類の効能効果

さらに身体への効果は基本的に皮膚表面および角質層までとし、基底層や真皮層等への表現は認められていません。
ただし、筋肉トレーニングを目的としたEMS機器は筋肉に対する刺激を表現することは可能です。

ここでは、美顔器やEMS、アロマオイルを例に、それぞれの製品で認められる表現と認められない表現をお伝えします。

美顔器・フェイススチーマー

認められない表現認められる表現表現のポイント
真皮から皮下組織まで美容成分を浸透させます。肌の奥深く※まで浸透。
※角質層まで。
美容・健康関連機器のアプローチは「角質層まで」
線維芽細胞に作用し、たるみを改善します。ハリのある肌を目指します。化粧品の効能効果の範囲を超える表現はできない。
細胞を活性化し、ターンオーバーを正常化します。肌を整えます。化粧品の効能効果の範囲を超える表現はできない。
たるみが気になる人にエイジングサインが気になる人に顔や身体の形状変化は謳えないので、 印象面の表現でとどめる。
アンチエイジングエイジングケア※
(※年齢に応じた対策)
エイジングの定義とケアという表記で断定を避ける。
血行を促進します。肌のコンディションを整えます。化粧品の効能効果の範囲を超える表現はできない。
デトックス効果で体内の老廃物を流し出します。汚れを(物理的に)押し流します。化粧品の効能効果の範囲を超える表現はできない。

若返りやアンチエイジング、美白、リフトアップ、血行促進、しわの解消、たるみ改善、しみが消えるなどの表現は認められないため、注意しましょう。

EMS(筋肉運動補助器具)

認められない表現認められる表現表現のポイント
筋肉の量を増やします。筋肉を鍛えます。筋電気刺激により筋収縮が行われる等のエビデンスを取得していることが条件となる。
ダイエット効果で痩せることができます。理想のボディを目指すことができます。医療機器のような効果を与える表現は認められない。
血行が促進されるため、疲労回復や肩こり改善が期待できます。日々のエクササイズに活用できます。医療機器のような治療的効果を与える表現は認められない。

EMSに関しては筋肉に対して刺激を与える表現は認められますが、筋肉を動かすことによるマッサージ効果や血行促進、脂肪燃焼効果、代謝アップ、疲労回復を改善などの表現は認められないため、注意しましょう。

アロマオイル

認められない表現認められる表現表現のポイント
セラピーを受けているような。トリートメントを受けているような。美容効果の範囲を超えた表現は認められない。
香り成分によるリラックス効果があります。柑橘系の爽やかな香りでリフレッシュできます。リラックスは精神的な効果のため認められないが、リフレッシュは気分転換を指すため可能。
香りによる効果で眠りが深くなり不眠症が改善します。お気に入りの香りに包まれて眠ることができます。医療機器のような治療的効果を与える表現は認められない。
○○の成分にはホルモンバランスを整える作用があります。○○は女性にも人気のアロマオイルです。美容効果の範囲を超えた表現は認められない。

アロマオイルは雑貨に分類されるため、広告で精油の効能効果を標榜することはできません。治療を表す”セラピー”の用語や、○○を改善・回復、女性ホルモンのバランスを整えるなどの治療的効果の表現は認められないため注意しましょう。
また、アロマオイルの成分を体内に取り込むことによるリラックス効果は、精神作用にあたるため認められません。ただし、「リラックスできる空間をつくる」など、人体と関係ない表現を用いれば可能であるため、リラックスという用語自体が使えないわけではないということを覚えておきましょう。

製造法の優秀性に関する表現について

製造法の優秀性について、消費者が事実に反する認識をもつような恐れのある表現は認められません。

・最高の技術
・最先端の技術で製造
・理想的な製造方法

などの表現には注意しましょう。

また特許を取得している旨の記載は問題ありませんが、「特許を取得しているから高い効果がある」といったように、特許取得を商品の効果保証と結び付けた表現は行わないように注意しましょう。

製品の優秀性を他機関で確認している場合は、「医療機関でテスト済」と記載すると医療機器を連想する恐れがあるため、「第三者機関でテスト済」などの「医療」という用語を用いない表現が適切です。

製品の安全性に関する表現について

天然素材などの安全性の高い原材料を使用しているために副作用がないとの表現は、問題が発生する恐れがあります。
「○○素材を使用しているため、アレルギーを起こしません」ではなく、「○○素材を施していますが、アレルギーを起こす可能性があるため事前にプレテストを行ってから使用してください」などの表現が適切です。

使用者の年齢や性別を問わず効果の保証や安全性の確保が確実にできるような表現も認められません。

・○日間、使用することで確実に効果が出る
・絶対に安全

などの表現には注意しましょう。

使用頻度や使用時間の表現について

美容・健康関連機器の乱用を助長させるような表現は認められません。消費者が無制限に使用することで副作用等の障害を発生させる恐れがあります。

・好転反応だから使い続けてもよい。
・いくら使用しても問題ない。
・使えば使うほど効果がある

などの表現には注意し、消費者に適切な使用方法や使用時間を守るよう促しましょう。

消費者に不安を与えるような表現について

一般消費者に対して、過度な不安を与えるような広告は認められません。

・あなたの肌はこのまま放置すると老化がどんどん進んでいく。
・ストレスを抱えている方はがんになります。
・睡眠の問題は高血圧や糖尿病、肥満などの様々な症状を必ず引き起こします。

・一般的なケアをしている顔写真と製品を使用してケアをしている顔写真の比較を掲載

などの表現で、消費者の不安感を過度に煽り、購入につなげるようば表示は薬機法に抵触するため認められません。

使用体験談の表現について

使用者の体験談により、美容・健康関連機器の効果を保証するような表現は認められません。また、薬機法や景品表示法の範囲を超えた内容の体験談の使用も避けましょう。

・○日間使い続けることで、マイナス〇㎏痩せました。
・△△を使い始めてから、シミが消えました。
・不眠症が改善し、疲れも取れやすくなりました。
・短期間で効果を実感できます。

・(写真を掲載し)before⇒after の劇的な変化を表現

などの表現には注意が必要です。

意図的に好意的なデータのみを選択して使用することも避けましょう。
使用前後の例示は、評価試験の方法を明確にし、事実に基づいた客観的データをもとに誇大な表現にならない範囲で行うことが大切です。

製品が、広告するその効果及び効能についての作用が事実であることが必要となる。又、その効能又は効果についての裏付けとなる客観的に証明されたデータを保持し、主務官庁又は公正取引委員会より要求があった場合、15 日以内に提示できなければならない。

平成 15 年 10 月 28 日公正取引委員会「不当景品類及び不当表示防止法第4条第2項の運用指針-不実証広告規制に関する指針-」

美容・健康関連機器で過去に措置命令が出た事例

最後に、美容・健康関連機器で過去に消費者庁から措置命令が出た事例を紹介します。

EMSでの過去事例

令和2年3月31日、消費者庁はEMS機器の販売事業者4社に対して、それぞれ景品表示法に違反する行為が認められたことから、措置命令を行いました。

EMS機器の販売事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について

消費者庁は、本日、EMS機器の販売事業者4社(以下「4社」といいます。)に対し、4社が供給するEMS機器に係る表示について、それぞれ、景品表示法に違反する行為(同法第5条第1号(優良誤認)に該当)が認められたことから、同法第7条第1項の規定に基づき、措置命令を行いました。

消費者庁 EMS機器の販売事業者4社に対する景品表示法に基づく措置命令について

4社はあたかも商品を一定期間使用することで、痩身効果が得られるかのように示す表示を行っていました。消費者庁は4社に対して表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、4社から資料は提出されましたが、合理的な根拠を示すものとは認められませんでした。

また、4社は商品の効果に対し、「商品の効果には個人差があり、適度な運動と食事制限を合わせた結果である」旨の打ち消し表示をそれぞれ記載していましたが、一般消費者が表示から受ける商品の効果に関する認識を打ち消すものではないと判断されました。(参考例:下記資料)

美顔器での事例

平成24年8月31日、消費者庁は大手通販化粧品会社の美顔器に対して、会報誌で謳っていた文言・表示に合理的な根拠が認めらないとして景品表示法違反で同社に措置命令を下しました。

会報誌において、例えば以下のような記載で、商品を使うことにより「細胞の活性化」「脂肪分解効果」「殺菌効果」「肌の汚れの除去」「肌への美容成分の浸透効果」が得られると認識される表示を行っていました。

・微細な振動が角質層を通って真皮層も活性化。新陳代謝が促され、肌の弾力を支えるエラスチンやコラーゲンの産生をサポートします。
・すぐれた超音波機能により、なでるだけでお腹や二の腕などについた余分な脂肪を分解。むくみもとれて、気になる部分のシェイプアップに効果的です。
・アクネ菌や皮脂腺の殺菌効果でニキビケアに効果的。
・微弱な電流を利用して美容成分をイオン化し、電気の流れととも肌の深部へ送り込みます。通常のお手入れでは浸透しづらい美肌成分も、電気の力でぐんぐん肌へ浸透します。
・排気ガスやメイク汚れなど、プラスの電気を帯びた汚れをマイナスイオンの力でしっかり吸着します。

株式会社ドクターシーラボに対する景品表示法に基づく措置命令について

消費者庁が裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、同社から資料は提出されましたが、合理的な根拠を示すものとは認められませんでした。

美容・健康関連機器の効果の表現の範囲には注意しよう

美容・健康関連機器の広告は過度な表現にならないように注意しましょう。Office ファーマヘルスでは、ガイドラインや過去の行政の指導事例をベースに、法律を遵守して広告制作やコンテンツ記事の執筆を行っています。お困りの方はお気軽にご相談ください。

【参考文献】
一般社団法人日本ホームヘルス機器協会 家庭向け美容・健康関連機器適正広告表示ガイド
東京都福祉保健局健康安全部薬務課 雑貨等の広告について(薬事該当性)

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