2024年はマイコプラズマ肺炎が全国的に流行しています。1999年に現行の観測方法で統計をとり始めて以降、1医療機関あたりの患者数が過去最多を記録しており、引き続き注意が必要です。
この記事では、マイコプラズマ肺炎の感染状況や治療薬、効果的な予防法について薬剤師が解説します。
マイコプラズマ肺炎とは
マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)という細菌によって引き起こされる呼吸器感染症です。この病気は主に小児や若年層に多く見られ、特に学校や集団生活をしている子供たちの間で流行します。
マイコプラズマ肺炎の潜伏期間は通常2〜3週間で、初期症状としては発熱、全身倦怠感、頭痛、咽頭痛などが現れ、数日後に咳が出てきます。マイコプラズマ肺炎の咳は、痰をともなわない乾いた咳(乾性咳嗽)が特徴で、熱が下がった後も長期間(3〜4週間)続くことがあります。[1][2]
多くは軽症で自然治癒しますが、ごく稀に重症化したり、中耳炎や皮疹、心筋炎、ギランバレー症候群を合併したりするケースもあるため、なかなか症状が改善しない場合は医療機関に早めに相談することが大切です。
マイコプラズマ肺炎の感染状況
マイコプラズマ肺炎は、感染症法に基づく感染症発生動向調査において5類感染症(定点把握)に位置付けられており、基幹定点医療機関から毎週患者数が報告されています。
国立感染症研究所の報告によると、2024年第49週(12月2日~12月8日)の1医療機関あたりの感染者数の全国平均は2.29人。[3]
ピーク時の第46週(11月13日~11月19日)2.84人からは減少傾向にあるものの、いぜんとして高い数値が報告されており、2024年は1999年からの観測以降、最も多い患者数を記録しています。
患者数が多い都道府県は、第49週時点で福井県(6.17人)、青森県(4.17人)、茨城県(3.77人)、奈良県(3.67人)、石川県(3.60人)です。
マイコプラズマ肺炎の治療法
マイコプラズマ肺炎は、血液検査での抗体や咽頭での抗原検査、画像検査でのすりガラス状陰影などから確定診断されます。
マイコプラズマ肺炎の治療には、主に抗菌薬が用いられ、通常服用から48~72時間程度で解熱します。[2]ただし、体の中の菌をきちんと殺すためにも抗菌薬は処方日数分飲み切ることが大切です。
治療に用いられる抗菌薬の種類は以下のとおりです。
・マクロライド系抗菌薬…クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど
・テトラサイクリン系抗菌薬…ミノサイクリンなど
・ニューキノロン系抗菌薬…レボフロキサシンなど
なお、テトラサイクリン系は永久歯の染色作用があるため、8歳未満の小児・妊婦には原則使用されません。また、関節障害の副作用が起こることから多くのニューキノロン系は小児への投与は禁忌とされています。
マイコプラズマは細胞壁をもたない細菌であるため、ペニシリン系やセフェム系のような細胞壁合成阻害薬の抗菌薬では効果が期待できません。
マイコプラズマ肺炎の予防法
マイコプラズマ肺炎は、主に感染者の咳やくしゃみのしぶきを吸い込むことで感染します(飛沫感染:ひまつかんせん)。
とくに、感染者がいるご家庭や、保育施設や学校などの閉鎖的空間で広がりやすくなります。
予防するためには、石けんを使った手洗いやアルコール消毒を用いた手指衛生のほか、マスク着用、こまめな換気など基本的な感染症対策が有効です。また、ご家庭が感染した場合は、家族間のタオル・食器の共用も避けましょう。
まとめ
この記事では、2024年大流行のマイコプラズマ肺炎の感染状況や治療薬、効果的な予防法について解説しました。
ピーク時よりは減少傾向にあるものの、いぜんとして高い患者数が報告されており、引き続き注意が必要です。
手洗いやマスク着用、こまめな換気など基本的な感染症対策を徹底しましょう。
また現在、関東圏を中心に伝染性紅斑(リンゴ病)の感染拡大も報告されており、日本産婦人科感染症学会などから注意喚起が出されているため、あわせて確認してみてください▼
【参考文献】
[1]厚生労働省 マイコプラズマ肺炎
[2]日本呼吸器学会、日本感染症学会、日本化学療法学会、日本環境感染学会、日本マイコプラズマ学会「マイコプラズマ感染症(マイコプラズマ肺炎)急増にあたり、その対策について」
[3]国立感染症研究所 マイコプラズマ肺炎