医療ライターとメディカルライターの違いとは?

医療・健康情報の重要性が高まる現代において、その情報を正確かつ適切に伝える「ライター」の役割はますます大きくなっています。なかでも「医療ライター」と「メディカルライター」は、医療分野を専門とするライターとして混同されがちですが、その役割、仕事内容、求められるスキルは大きく異なります。

この記事では、医療ライターとメディカルライターの違いについて、対象読者、作成する文書、必要な能力、そしてキャリアパスといった多角的な視点から解説します。それぞれの道を志す方にとって、自身の適性やキャリアプランを考える一助となれば幸いです。


目次

医療ライター:医療と社会をつなぐ「翻訳家」

定義と役割

医療ライターは、主に一般の人々を対象に、医療、健康、美容に関する情報を分かりやすく伝える専門家です。その最大の使命は、難解になりがちな専門情報を、患者さんやそのご家族、健康に関心を持つ一般読者のリテラシーに合わせて「翻訳」し、知識向上や不安解消、そして適切な行動変容を促すことにあります。いわば、医療の世界と社会をつなぐ「架け橋」や「翻訳家」のような存在です。

主な仕事内容

医療ライターが手掛ける仕事は多岐にわたりますが、その多くは一般向けのコンテンツ作成です。

Webメディアの記事作成

健康情報サイト、医療系ニュースサイト、製薬会社やヘルスケアメーカーのオウンドメディアなどで、疾患の解説、予防法、最新の治療法、セルフケアなどに関する記事を執筆・編集します。正しい情報を伝えることはもちろん、Webサイトへの流入数アップ・マーケティングを意識したライティングが求められることも少なくありません。

病院・クリニックの広報物作成

公式サイトのコンテンツ、患者さん向けのパンフレット、院内報などの制作に携わります。その医療機関の特色や理念を伝え、患者さんに安心感を与える役割を担います。

取材記事の企画・執筆

Webメディアや雑誌で掲載する、専門家へのインタビュー記事を企画・執筆します。一次情報に基づく取材記事は、信頼性と独自性が非常に高く、特にAI生成の記事が増えている昨今においては価値を増しています。

LP制作

医療情報の正確性や関連法規に配慮しながら、医薬品やサプリメント、化粧品、医療機器などの商品の魅力を伝え、購買欲を高めるようなコピーライティングを行います。

求められるスキル

医療ライターは、医学的知識だけでなく、情報の収集力、批判的吟味、そして集めた情報をわかりやすく伝える能力が必要とされます。具体的には以下のようなスキルが求められます。

  • 翻訳・平易化能力: 専門用語や複雑な医療情報を、中学生が読んでも理解できるような平易な言葉に置き換えるスキル。
  • 共感力と倫理観: 読者である患者さんやその家族の不安な気持ちに寄り添い、希望を失わせない、あるいは誤った期待を抱かせない、配慮に富んだ表現力と高い倫理観。
  • 情報収集・ファクトチェック能力: 信頼できる情報源(公的機関の資料、医学論文、専門医への取材など)から正確な情報を収集し、その真偽を批判的に吟味し選別できる能力。
  • ストーリーテリング能力: 単なる情報の羅列ではなく、読者の心に響くストーリーとして構成し、行動を促すコピーライティング力。
  • (Webの場合)SEOやLLMOの知識・スキル: Google・Yahooなどの検索エンジンで上位表示させたり、ChatGPT・GeminiなどのAI検索で引用されたりするようなコンテンツを制作し、より多くの読者に情報を届けるための技術的な知識とスキル。
  • 薬機法や医療広告ガイドライン等の知識:医療・ヘルスケア分野の商品・サービスを訴求する際には、薬機法や医療広告ガイドラインを遵守しながら訴求力を高めるスキル。

メディカルライター:医薬品開発を支える「専門文書の作成者」

定義と役割

メディカルライターは、規制当局、製薬企業、医療従事者を対象に、主に治験関連文書やインタビューフォームなどの科学文書を作成する専門家です。医薬品や医療機器の開発から承認申請、そして市販後の適正使用に至るまで、科学的根拠に基づいた正確無比な文書を作成します。

主な仕事内容

メディカルライターの仕事は、医薬品開発のプロセスと密接に関連しており、作成する文書は薬事規制や国際的なガイドラインに厳格に準拠する必要があります。

  • 臨床開発関連文書:
    • 治験実施計画書(プロトコール): 治験の目的、デザイン、方法、評価項目などを詳細に規定する文書。
    • 治験薬概要書(IB): 治験薬に関する非臨床・臨床データをまとめた文書。
    • 同意説明文書(ICF): 被験者が治験への参加を判断するために、治験の内容を分かりやすく説明する文書。
    • 臨床試験総括報告書(CSR): 治験の結果を科学的かつ網羅的に記述する報告書。
  • 薬事申請関連文書:
    • CTD(コモン・テクニカル・ドキュメント): 医薬品の承認申請のために、品質、非臨床試験、臨床試験に関する膨大なデータをまとめた国際共通様式の申請資料。メディカルライターは特に臨床パート(第2部:概要文、第5部:臨床試験報告書など)の作成を担います。
  • 製造販売後関連文書:
    • 添付文書・インタビューフォーム: 医師や薬剤師が医薬品を適正に使用するための基本情報。
    • 適正使用ガイド、プロモーション資材: 医療従事者向けに、医薬品のより深い理解や安全な使用を促すための資材。

求められるスキル

メディカルライターには、ライティングスキル以前に、科学的なバックグラウンドが不可欠です。

  • 医学・薬学知識: 担当領域(がん、中枢神経、循環器など)における深い専門知識。
  • 科学的ライティング能力: 客観的なデータに基づき、論理的で明晰、かつ簡潔な文章を構成する能力。事実を正確に伝えるスタイルが求められます。
  • 薬事規制・ガイドラインの知識: 薬機法、GCP(医薬品の臨床試験の実施の基準)、ICH(医薬品規制調和国際会議)ガイドラインなど、国内外の法規制に関する深い理解。
  • 統計学の知識: 臨床試験データの統計解析結果を正しく解釈し、文書に反映させる能力。
  • 英語力: 最新の医学論文の読解はもちろん、国際共同治験の文書や英文学術誌への投稿など、実務レベルの高い英語力(特にリーディングとライティング)が必須です。

一目でわかる!医療ライターとメディカルライターの違い

項目医療ライターメディカルライター
主たる目的医療情報の普及・啓発、読者の行動変容医薬品等の開発・承認に係る資材提供
対象読者一般人、患者、その家族規制当局、医療従事者、研究者
作成する文書Web記事、雑誌コラム、パンフレット、書籍、LPなど治験関連文書、承認申請資料(CTD)、IF、添付文書など
必要な知識医学・薬学知識、SEO、マーケティング、薬機法・広告ガイドライン医学・薬学、統計学、薬事規制、ガイドライン
必須スキル平易な言葉への翻訳力、共感力・倫理観、情報収集力、企画・提案力科学的思考力、医薬品開発に係る法規制に関する理解力、英語力
働く場所編集プロダクション、製薬会社、ヘルスケアメーカー、フリーランス製薬会社、CRO(開発業務受託機関)、フリーランス

一般の方向けに医療サービス・ヘルスケア商品の魅力を訴求したい場合には医療ライターに依頼しよう

医療ライターとメディカルライターは、混同されるケースも多いですが作成する文書や求められるスキルが異なります。
医療機関やヘルスケアメーカーのマーケティングを目的としたライティングは、医療ライターに依頼するのが良いでしょう。

株式会社Officeファーマヘルスでは、医療機関やヘルスケア関連企業のコンテンツ執筆・マーケティング支援を行っています。医療従事者による執筆・監修で、患者さま・お客さまに信頼されるコンテンツ作りを目指します。
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この記事を書いた人

薬剤師/株式会社Officeファーマヘルス代表。
メーカーでスキンケア製品や衛生用品の研究開発に従事した後、薬局薬剤師に転職。 患者さんに服薬指導をする中で、さらに多くの人に医療や健康の正しい情報を発信していきたいという思いを持ち、執筆活動を始める。
SEO検定1級、YMAA認証(薬機法医療法遵守広告代理店認証)取得。       

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