12月18日、厚労省は第114回社会保障審議会・医療部会を開催し、2040年頃に向けた医療提供体制の改革(案)を提示しました。
日本では2040年頃に85歳以上の高齢者人口がピークをむかえ、一方で生産年齢人口の減少が進むことから、医療需要の増加と医療従事者の不足という課題が今以上に深刻化することが予想されています。
この問題に対して、「2040年頃を見据えた新たな地域医療構想」「医師偏在対策」「医療DXの推進」「美容医療への対応」「オンライン診療の推進」についての改革案が取りまとめられました。来年には通常国会への提出が行われる予定です。
「2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革(案)」の内容とは
引用元:厚生労働省 2040年頃に向けた医療提供体制の総合的な改革に関する意見案
医療提供体制の改革案については以下のとおりです。
2040年頃を見据えた新たな地域医療構想
2040年頃には85歳以上の高齢者がピークを迎え、在宅医療や救急搬送の需要が大幅に増加すると予測されています。
一方で、生産年齢人口の減少が進み、医療従事者の確保が困難になることが見込まれます。
また、都市部では高齢者が増加する一方で、過疎地域では高齢者も減少することから地域ごとに必要な医療提供体制が異なります。
このため、すべての地域・世代の患者さんが、適切に医療・介護を受けながら生活し、必要に応じて入院し、また日常生活に戻ることができるような医療提供体制を構築することが課題とされています。
課題への対応策としては、以下のような構想があります。
医師偏在対策
医師の偏在も深刻な課題です。医師の高齢化、特に診療所医師の高齢化が進んでいることに加え、人口が少ない地域では診療所数が減少傾向にある一方、人口が多い地域では増加傾向にあるなど、地域的な偏りも顕著です。 歯科医師、薬剤師、看護師等の他の医療従事者についても、同様の課題が指摘されています。.
これに対し、地域の医療機関の支え合いの仕組みや経済的インセンティブ、医師養成過程を通じた取り組みなどを組み合わせた総合的な対策を進める必要性が示されています。具体的には、以下のような構想があります。
医療DXの推進
医療DXの推進については、医療分野におけるデジタル技術の活用を進め、より質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築することを目指しています。
とくに、少子高齢化・人口減少が進展し、医療・介護の担い手確保が厳しくなる中で、質の高い医療を効率的に提供するためには医療機関・薬局等間における電子的情報共有が不可欠となっています。また、集められた医療等情報の二次利用を推進することで、医学・医療分野のイノベーションを進め、国民や患者にその成果を還元することもできます。
具体的には、以下のような構想があります。
美容医療への対応
美容医療に関しては、近年需要が高まっている一方で、患者からの相談件数や健康被害の相談事例も年々増加しています。
引用元:厚生労働省 美容医療の適切な実施に関する検討会の議論の状況について(令和6年10月30日)
このような現状を踏まえ、以下のような対応策が検討されています。
近年は美容医療を含め、とくに自由診療の誇大・過度な広告が増えており、規制の強化を求める声も高まっていました。2024年版の医療広告ガイドラインでも医療広告における表現規制が明確化されています。▼
オンライン診療の推進
オンライン診療は、医事法上、オンライン診療指針によって法令の解釈運用により、機動的かつ柔軟に実施されてきました。しかし、法令の解釈のみでオンライン診療の適切な実施を図るには課題があるため、法制上の位置付けを明確にした上で、適切なオンライン診療を推進していくべきとされています。
具体的には、以下のような構想があります。
医療従事者も改革の必要性を認識し、患者様に伝えていくことが大切
2040年頃に85歳以上の高齢者の人口がピークをむかえるにあたり、厚労省は2040年頃に向けた医療提供体制の改革(案)を提示しました。
少子高齢化が進む日本では、今後 医療や介護の担い手が不足している中で増加する医療需要に対応するため、より効率的な医療提供体制を整える必要があります。
そのために、新しい地域医療構想の実現、医療DX・オンライン診療の推進、医師の地域ごとの偏在を是正に急ぎ取り組んでいかなければなりません。
医療現場ではマイナ保険証やオンライン資格確認などの新たな仕組みが導入され、いまだ混乱の声も聞かれます。しかし、私たち医療従事者がその必要性をきちんと認識し、患者さんにも取り入れてもらえるよう伝えていくことが大切です。
医療現場では直接患者様に伝えることが難しいようであれば、ホームページや院長ブログ、電子掲示板、LINE登録のメッセージなどを活用していくのも良いでしょう。