【2024年12月2日】マイナ保険証へ本格移行!医療機関での普及率や使い方、薬剤師が現場で感じる活用の課題とは

2024年12月2日以降、従来の健康保険証は新たに発行されなくなり、マイナンバーカードを基本とする仕組みに移行しました。以前より厚生労働省が普及活動に取り組んでいましたが、医療機関での普及率は伸び悩んでおり、まだ十分に活用されているとは言い難い状況です。

しかし、少子高齢化が進む日本において医療DXの促進は急務であり、マイナ保険証がうまく活用されれば医療サービスの効率化や医療従事者の負担軽減、医療の質の向上が期待できます。

この記事では、マイナ保険証の現状の普及率とともに、マイナ保険証を使うメリットやその使用方法、薬剤師が実際に現場で感じる活用の課題についてお伝えします。

目次

マイナ保険証へ本格移行!従来の健康保険証はどうなるの?

2024年12月2日以降、従来の健康保険証は新しく発行されなくなり、マイナンバーカードを利用したマイナ保険証へと本格移行します。
ただし、今まで使用していた健康保険証がすぐに使えなくなるわけではなく、最長1年間は利用可能です。2025年12月1日までに有効期間が切れる場合には、その期間までであれば従来通りに使うことができます。[1]

また、現時点でマイナ保険証を持っていない方には、被保険者資格の情報等が記載された「資格確認書」が発行されます。そのため来年12月1日までは、導入移行期間としてマイナ保険証・有効期限内の健康保険証・資格確認書が医療機関の窓口で利用できます。[1]

マイナ保険証の医療機関での普及率

2024年10月31日に発表された厚生労働省の資料によると、同年9月のマイナ保険証の利用率(※)は13.58%と報告されています。[2]※オンライン資格確認を利用した件数のううち、マイナ保険証を利用している割合

引用元:厚生労働省保険局 マイナ保険証の利用促進等について(令和6年10月31日第184回社会保障審議会医療保険部会)

厚生労働省等の積極的な働きかけもあり、今年に入ってからは利用率は右肩上がりに増えており、2024年1月時点で4.60%であった利用率は9月時点では13.87%となりました。ただし、数値で見ると15%にも満たないことから、まだまだ十分に普及しているとは言い難く、今後のさらなる利用率増加が望まれます。
マイナ保険証の普及が伸び悩んでいる理由としては、情報漏洩が心配という声やメリットを感じられないという声が聞かれます。
特にマイナ保険証を持ち歩かない人の多くは、「持ち歩いてもし落としたら、個人情報を悪用されてしまうかもしれない」といった不安があると考えられます。しかし実際は、12ケタのマイナンバーやカードのICチップから個人情報等を読み取ることはできません。

マイナ保険証のメリット

マイナ保険証のメリットとしては、主に以下の4点があげられます。

過去の医療データに基づくより良い医療が受けられる

マイナ保険証を利用して医療機関を受診した際に、患者が自身の薬の履歴や過去の特定健診の情報等の提供に同意することで、医師や薬剤師は患者の過去の医療データを確認することができます。その結果、初めて利用する病院や薬局においても、過去の医療データに基づいて、正確な診断を行ったり重複する投薬を回避したりすることができ、適切な医療を受けることができます。

面倒な手続きなしで高額療養費の限度額を超える支払が免除される

従来では高額療養費の限度額を超えた金額の支給を受けるためには、一旦窓口で全額支払い支払請求書を提出するか、事前に「限度額適用認定証」を申請する必要がありました。しかしマイナ保険証を利用すれば、従来のように患者が一時的に自己負担したり、事前に限度額適用認定証の書類申請手続き行ったりする必要がなくなります。

マイナポータルを利用して確定申告の医療費控除が容易になる

マイナポータルから保険医療を受けた記録が確認できるため、領収証を保管・提出する必要がなく、容易に医療費控除申請の手続きができます。

医療機関で働く人たちの負担を軽減できる

従来では病院や薬局は適切な医療を提供するために、問診や保険証を手作業で登録することが必要でしたが、マイナ保険証を利用することで、マイナ保険証の情報がそのまま電子カルテや電子薬歴等に移行されるため、医療従事者は医療データの共有・確認がスムーズになります。また、顔認証付きカードリーダーにより資格情報の自動取得が可能になるため、事務員の負担や記録ミスを減らすことができます。

マイナ保険証の医療機関での使い方

マイナ保険証を医療機関で使用するには、初回のみ登録が必要です。登録は、マイナポータルや全国セブンATMからの申請もできますが、医療機関窓口にある顔認証付きカードリーダーで手続きを行うのが便利です。

登録後は以下の手順に沿って、利用を開始します。

マイナ保険証をカードリーダで読み込む

マイナ保険証を顔認証付きカードリーダーに入れて、情報を読み込みます。
カードリーダーは5種類のメーカーから販売されており、マイナンバーカードを縦向きに入れる場合と横向きに入れる場合があります。

本人確認を行う

顔認証または4ケタの暗証番号入力のどちらかを選択し、本人確認を行います。顔認証を利用する場合、マスクや帽子を着用したままでも問題なく認証できます。

医療情報の提供に関する同意取得を行う

医師や薬剤師に提供する医療情報(過去の診療・薬剤情報、特定健診情報など)を選択します。「すべて同意する」で一括同意できる場合もあります。同意取得がすべて終われば、受付完了です。

なお、マイナ保険証は医療機関を受診する際には毎回提示することが求められます。従来の保険証のように勤務先の変更等で変わることがないため、毎回の提出は不要と思われている方も多いです。しかし、診療・薬剤情報の閲覧について毎回同意を受けることが必要であることや、マイナンバーカードも5年ごとに更新が必要であることから、医療機関の受付では毎回提示するようにしましょう。

薬剤師が感じる医療現場でのマイナ保険証活用の課題について

マイナ保険証へ本格移行となった12月に入り、マイナ保険証を利用される患者の数は以前よりも増えてきたように感じます。
一方で、窓口でマイナ保険証を読み取る機械が医療機関によって異なるため、利用・操作方法が微妙に異なることから、特に高齢の患者においては受付がスムーズにいかない姿も多く見受けられます。その度に医療スタッフの手がとまり、すぐに負担が軽減されたとは言い難い状況です。

また、マイナ保険証の「各種情報提供の同意」を拒否されている患者も一定数おり、マイナ保険証のメリットを生かし切れていないと感じます。厚労省等の普及活動だけに頼るのではなく、医療機関側からも積極的にマイナ保険証を利用するメリットについて患者に伝えていく必要があるでしょう。

さらに、薬剤情報は前月のレセプトデータを元に毎月11日に更新されることから、直近の薬歴は見れずに不便を感じることもあります。今後、電子処方箋も普及すれば、直近の処方・調剤情報まで確認できるようになることから、マイナ保険証にあわせて電子処方箋の普及にも期待がもたれます。

【参考文献】
[1]厚生労働省 国民向けマイナンバーカードの利用案内サイト
[2]厚生労働省 マイナ保険証の利用促進等について

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